Haus der Statistik をめぐる活動
アレクサンダープラッツ駅から数分の場所に、巨大な廃墟ビルが放置されている。かつてDDR(東ドイツ)時代に建設された統計局で、後に上層階には国家保安省=シュタ―ジ(Ministeriums für Staatssicherheit)が置かれた暗い歴史を背負い込んだ建物でもある。ドイツ再統一後、しばらくは連邦の役所機関として使用された後、2008年から実に10年の間、放置されている。2010年には、取り壊しが決定したものの、アレクサンダープラッツ駅近辺の地価は急騰し、巨大ショッピングモールALEXのすぐ裏手の一等地に位置するこの場所を、簡単に手放すこともできなくなり、ベルリン州は全面的にその建設案を市民の議論にゆだねることに決定する。
この議論に大きく関与したのが、教育関係者たちとアーティストたちである。この廃墟を、あらたに「革新的な文化・教育・社会の融合モデル実践」として誕生させるために、彼ら主導でのワークショップがビル横に建てられたアトリエで今なお実施されている。今回のベルリン出張でインタヴューをしたハイナー・ミュラー研究者であり、社会教育の実践家でもあるシュトレーロー氏も、そこでワークショップを開催した一人である。実際の参加者の多くは教育関係の仕事につく女性たちであったと詳細を聞いた時に教えていただいた。
実はHaus der Statistikの再建については、さらに大きく難民住居としての使用というアイデアも関わっている。2015年秋からドイツでは難民問題が喫緊の課題となり、ベルリン州もまた、この廃墟を難民のための住居として使用するアイデアを出しており、そのアイデアは2019年1月の現状においては、難民の住居も一部にありつつ、同時に芸術家たちのアトリエもあり、また演劇やギャラリーとしての文化的なイベントができる場所として、構想が進められているようだ。いずれにしても、難民とアーティストのための住居・作業空間として、新たにHaus der Statistikが完成される日が待ち遠しい。
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